各国共同研究開発

各国共同研究開発領域

環境・エネルギーライフサイエンス・臨床医学システム・情報科学技術ナノテクノロジー・材料 防災、宇宙、海洋、原子力などの先端・重要科学技術分野の研究開発分野(ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料)及び推進4 分野(エネルギー、ものづくり技術、社会基盤、フロンティア)加えて、人材育成の重要性も改めて示され、男女共同参画の重要性が強調され、女性研究者の採用目標

各国共同研究開発パートナー一覧

日本

理化学研究所、日本原子力研究開発機構(JAEA)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、海洋研究開発機構、また旧国立試験研究所である物質・材料研究機構(NIMS)、放射線医学総合研究所(現 量子科

学技術研究開発機構の一部)、防災科学技術研究所 日本学術振興会(JSPS 科学技術振興機構(JST)科学技術・学術政策研究所(NISTEP) 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、日本医療研究開発機構(AMED)国連における持続可能な開発目標(SDGs)産業技術総合研究所(AIST)、産業研究所(RIETI)、物質・材料研究機構、理化学研究所、産業技術総合研究所、

主要国の研究開発戦略(2020年)

CRDS-FY2019-FR-02 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター

共同研究開発大学

東北大学、東京大学、京都大学、東京工業大学、名古屋大学、大阪大学、一橋大学

共同研究開発案件

「震災からの復興、再生の実現」、環境・ エネルギーを対象とする「グリーンイノベーションの推進」、医療・介護・健康を対象とする「ライフイノベーションの推進」再生可能エネルギー・水素等)。農林水産研究「超スマート社会」の実現(Society 5.0)が謳われ、その実現に向けて先行的に進めるとされた「11 のシステム」には「地域包括ケアシステムの推進」、「スマート・フードチェーンシステム」、「スマート生産システム」が含まれている。また戦略的に解決に取り組んでいくべき課題の中でも、食料の安定的な確保、世界最先端の医療技術の実現による健康長寿社会の形成、ものづくり・コトづくりの競争力向上など関連事項が

複数含まれている。なお上述の「世界最先端の医療技術の実現による健康長寿社会の形成」に係る研究開発に関しては、健康・医療戦略推進本部の下、健康・医療戦略及び医療分野研究開発推進計画に基づき、以下の9 つの主な取組みを柱に推進するとしている。またその他には感染症対策などの分野での国際貢献を進めていくことライフサイエンス・臨床医学分野医療分野研究開発推進計画に基づき、再生医療、がんなど医療ICT 基盤の構築および利活用の環境整備を行うこととしている。大規模なコホート研究・健康調査、医療情報の電子化・標準化・データベース化、iPS細胞の安定的な培養・保存技術等を含めた再生医療の実用化に向けた研究開発、ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の研究開発、医薬品・医療機器の承認審査の迅速化・効率化・体制の強化等、複数方面での進捗が挙げられている。基本計画のフォローアップで「ヒトiPS 細胞の作成成功」、「各種臓器がんについての原因遺伝子同定及び治療法開発」、「イネゲノム解析等の結果を踏まえた新しいイネ等の作出計画進展」など

オールジャパンでの医薬品創出

オールジャパンでの医療機器開発

革新的医療技術創出拠点プロジェクト

再生医療の実現化ハイウェイ構想

疾病克服に向けたゲノム医療実現化プロジェクト

ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクト

脳とこころの健康大国実現プロジェクト

新興・再興感染症制御プロジェクト

研究開発の俯瞰報告書

医療・介護・健康関連産業を成長牽引産業へと育成していくこと」、「日本発の革新的医薬品や医療・介護技術に係る研究開発を推進していくこと」

革新的な予防法の開発」、「新しい早期診断法の開発」、「安全で有効性の高い治療の実現」、「高齢者、障害者、患者の生活の質(QOL)の向上」

グリーン・イノベーション」の一環で、バイオマスエネルギーやバイオリファ

イナリーなどに関する研究開発が脈々と取り組まれている。

科学技術活動

総合科学技術・イノベーション会議

文部科学省では、ライフサイエンス、材料・ナノテクノロジー、防災、宇宙、海洋、原子力などの先端・重要科学技術分野の研究開発の実施や、創造的・基礎的研究の充実強化などを進めており科学技術・学術審議会

日本学術会議日本構築し、人文・社会科学、生命科学、理学・工学の3 つの部会や分野別委員会、課題別委員会において科学に関する重要課題を審議し、政府に対する政策提言として取りまとめている

は以下のとおりである。

(1) 独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)

(2) 国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)

(3) 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

(4) 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)

世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」事業を実施している

り、1) 大型放射光施設(SPring-8)、2) X 線自由電子レーザー施設(SACLA)、3) スーパーコンピュータ「京」、4) 大強度陽子加速器施設(J-PARC)の4 施設が指定され、国の支援を受けている。

中国

研究拠点・基盤整備

「国家中長期科学技術発展計画綱要(2006~2020)」では、研究基盤整備に関して以下のように記述されている297。「第一に、大型科学機器や施設の建設及び、これらの共有を促進する。第二にデータ及び情報プラットフォームに関しては、データ及び文献の共有を促進し、社会全体にサービスを提供する。第三に、資源に関するプラットフォームとして、遺伝子資源、標本などの自然科学や技術における資源の保護、利用システムを確立する。第四に、国内での計量標準、技術標準を策定する。」

国家発展改革委員会は、科学技術部、財政部、教育部、中国科学院、中国工程院、国家自然科学基金委員会、国家国防科学技術工業局、中国人民解放軍総装備部などの関連部門と共同で、「国家重大科学技術インフラ整備中長期計画(2012 年~2030 年)」を策定した。これは中国初めての国家重大科学技術インフラの中長期建設と発展を系統的に推進するための文書である。国の科学技術戦略にのっとり、エネルギー、生命科学、地球システム・環境、材料、素粒子物理、核物理、宇宙・天文、エンジニアリング技術の7 つの重点分野を指定し、それぞれの分野における研究インフラを整備するとしている。

知的財産権に関する動きとしては、2019 年9 月に「技術・イノベーションサポートセンター(TISC)」を設立し、世界知的財産権機関(WIPO)をはじめ世界各国と提携し、知的財産権を保護する国際的な取り組みを強化していく方針を発表している298。

以下、主要な研究拠点及び研究基盤を紹介する。① 国家実験室中国では、1984 年に科学技術部、教育部と中国科学院等が中心となり重点的に予算を配分する

研究室を指定する国家重点実験室計画を開始した。これらの国家重点実験室は当初、大学・国立研究機関に設置され、年間800 万~1,000 万元(約1.2 億~1.6 億円)の安定的な支援が得られた。2015 年10 月には、企業に設置された国家重点実験室が75 拠点認定され、その時点で合計265の実験室が指定されていた。また、2018 年6 月に科学技術部から発表された「国家重点実験室建設発展の強化に関する意見」では、「2020 年までに大学・国立研究機関所属の国家重点実験室を300 拠点、企業型国家重点実験室を270 拠点、省部共同国家重点実験室を70 拠点、全体で700拠点程度まで増加」299させる予定であることが述べられている。1990 年代からは、国家重点実験室の上位の「実験室」として国家実験室が設置されることとなり、シンクロトロンをはじめとする大型施設・設備が建設された。2003 年までに、こうした大型研究施設を中心に中央政府は9 つの国家実験室を承認した。2006 年頃から中央政府による第三

期の国家実験室の設置を検討した際、従来数百人規模だった国家実験室を数千名規模とした上で、多分野融合の国家実験室を建設する方針を打ち出した。2016 年には、この方針を受けた代表的実験室である青島海洋国家実験室に2 億元が提供された。

【図表VII-6】 国家実験室一覧(2018 年現在)名称 設立時期 所属大学・研究機構 都市

第一期 国家実験室

1 放射光国家実験室 1984 年 中国科学技術大学 合肥

2 北京電子陽子加速器国家実験室

1984 年 中国科学院・高エネルギー物理研究所 北京

3 蘭州イオン加速器国家実験室

1991 年 中国科学院・現代物理研究所 蘭州

4 瀋陽材料科学国家実験室 2000 年 中国科学院・金属研究所 瀋陽

第二期 国家実験室(2003 年に建設が承認され、最終資格が審査中)

5 北京凝縮系物理国家実験室 審査中 中国科学院・物理研究所 北京

6 合肥微小物質科学国家実験室

審査中 中国科学技術大学 合肥

7 清華大学情報科学技術国家実験室

審査中 清華大学 北京 北京分子科学国家実験室 審査中 北京大学、中国科学院・化学研究所 北京

9 武漢オプトエレクトニックス国家実験室

審査中 華中科学技術大学、中国科学院・武漢物

理数学研究所、中国船舶重工集団公司、

第717 研究所

武漢

第三期 国家実験室(2006 年以降に建設が承認され、最終資格が審査中)

10 青島海洋科学と技術国家実

験室

2013 年 中国海洋大学、中国科学院・海洋研究

所等

青島

11 磁気閉じ込め核融合国家実験室

審査中 中国科学院・合肥物質科学研究所、原子

力産業西南物理研究院

合肥

成都

12 グリーンエネルギー国家実験室

審査中 中国科学院・大連物理化学研究所 大連

13 船舶・海洋工学国家実験室 審査中 上海交通大学 上海

14 微細構造国家実験室 審査中 南京大学 南京

15 重病難病国家実験室 審査中 中国医学科学院 北京

16 タンパク質科学国家実験室 審査中 中国科学院・生物物理研究所 北京

17 航空科学技術国家実験室 審査中 北京航空航天大学 北京

18 現代軌道交通国家実験室 審査中 西南交通大学 成都

19 現代農業技術国家実験室 審査中 中国農業大学 北京

出典:各種データを元にCRDS 作成

② 国家ナノ科学センター世界的にナノテクノロジーが注目されだした中、中国科学院と教育部の初めての共同事業として、中国科学院と清華大学及び北京大学による中国国家ナノ科学センターが設置された。当センターは中国科学院・化学研究所の敷地内にあり、ナノデバイス、ナノ材料、ナノ材料の生体への影響と安全評価、ナノキャラクタリゼーション、ナノ標準化、ナノマニュファクチャリン

グ等の実験室を抱える。

③ スーパーコンピュータ

2017 年6 月に発表された世界のスーパーコンピュータの性能ランキング「TOP500」によると、中国無錫国立スーパーコンピュータセンターが開発した「神威・太湖の光(Sunway Taihu Light)」が93.01PFLOPS で2 年連続世界第1 位を獲得した。

中国におけるスーパーコンピュータの開発は、国防科技大学の天河シリーズ、銀河シリーズ、中国科学院の星雲シリーズ、国家並行計算機工程技術センターの神威シリーズ、及びレノボグループ深騰シリーズの四者が開発競争を行っている状況にある。2017 年6 月に1 位になった時点で、「神威・太湖の光」が国家並列計算機工程技術研究中心(NRCPC)の開発した国産の高性能プロセッサ「SW26010」を採用していた。

中国のスーパーコンピュータはハード面だけではなく、清華大学付昊桓副教授(FU Haoheng)がリードした研究チームは、「神威・太湖の光(Sunway Taihu Light)」に基づき「非線形地震シミュレーション」ソフトウェアを開発して、2017 年のゴードンベル賞を受賞するなど、スーパーコンピュータの応用ソフトウェアの開発も世界水準に達している。2019 年11 月に発表された「TOP500」では、2018 年に続き「神威・太湖之光」が世界第3 位、「天河二号」が第4 位であった。

④ トカマク型核融合装置:EAST中国科学院プラズマ物理研究所(安徽省・合肥市)では、世界初の超伝導技術を用いたトカマク型核融合装置、EAST301の開発が取り組まれている。プラズマ物理研究所では従来、ロシアから導入したトカマク型核融合装置HT-7 の改造に取り組んできたが、その次世代装置として開発されたのがEAST である。2012 年8 月に、中国科学院プラズマ物理研究所、日本核融合科学研究所と韓国国家核融合研究所(NFRI)が韓国済州島にて「高性能プラズマ定常保持に関する重要な物理的課題研究」ワークショップを開催し、日中韓三国の核融合領域における「A3 フォー

サイトグラム」が正式的に発足した。日本学術振興会(JSPS)、中国国家自然科学基金委員会(NSFC)と韓国研究財団(NRF)三者共同出資で、5 年間にわたって1,500 万元を投入することになった。2017 年には、プラズマ持続時間101.2 秒、プラズマ温度5,000 万度を達成した。将来的には、温度1 億度の高温プラズマを持続的に1,000 秒間保持することを目指している中国で建設済み・建設中の大型科学技術施設

国家自主創新基礎能力建設第十一次五カ年計画(2006-2010 年)で指定された研究施

設国家重大科学基盤建設中長期計画(2012-2030 年)十二次五カ年計画期間中に優先的に建設する研究施設

1 核破砕中性子源 1 海底観測ネットワーク

2 強磁場装置 2 高エネルギー放射光検証装置

3 大型天文望遠鏡LAMOST 3 加速器駆動核変換システム

4 海洋科学総合調査船 4 総合的極端条件発生実験装置(超低温等)

5 航空リモートセンサリングシステム 5 大電流重イオン加速装置

6 航空機氷結実験用風洞 6 高燃焼効率・低炭素ガスタービン試験装置

7 地殻変動観測ネットワーク 7 高高度宇宙線観測ステーション

8 材料安全評価施設 8 未来通信ネットワーク実験装置

9 国家タンパク質科学センター 9 宇宙環境シミュレータ

10 大型宇宙環境基盤観測システム(子午

工程)

10 トランスレーショナル医療研究施設

11 地下資源探査及び地震予測用超低周波

電磁気観測システム

11 南極天文台

12 農業生物安全研究センター

12 精密重力測量装置

13 大型低速風洞

14 上海光源実験ステーションの増設

15 モデル動物の表現型と遺伝分析施設

16 数値地球システム·シミュレータ

上記大型研究施設の代表例として、放射光施設の上海光源とパルス超強磁場発生装置を以下に

紹介する。

<放射光施設:上海光源>

中国科学院・上海応用物理研究所には、中国最大の放射光施設「上海光源」(上海市、張江ハイテクパーク内に立地)が建設され、2009 年より稼働している。加速エネルギーは3.5GeV、蓄積リング長は432mであり、第三世代放射光放射光施設である。

中国科学技術大学・微小物質国家実験室(安徽省・合肥市)及び中国科学院高エネルギー物理研究所の北京シンクロトロン放射光施設(北京市)とあわせて、中国国内には計3 ヵ所の放射光施設がある。<パルス超強磁場発生装置>

パルス超強磁場発生装置は、2008 年4 月に華中科学技術大学によって開発が開始され、2014年10 月に完成した。当実験装置は「国家自主創新基礎能力建設第十一次五カ年計画(2006-2010年)」によって指定された12 の国家重大科学研究施設・装置の一つであり、最高磁場50T~80T(定常)、パルス幅2,250ms~15ms に設計され、合計で1.33 億元が投入された。

7.3.1.3 産学官連携・地域振興

① 中国科学院・院地協力事業

1998 年中国科学院は、企業・地方行政との横断的連携事業である「院地協力302」事業を立ち上げた。本事業では、2000 年以降に、青島生物エネルギー・プロセス研究所、煙台海岸帯研究所、蘇州ナノテク研究所、蘇州生物医学エンジニアリング研究所、寧波材料技術・エンジニアリング研究所、深セン先進技術研究院など、東沿岸部の経済発展課題向けの研究所を設立した。こうした産学官連携においては、地域行政側は土地、建物を提供し、科学院側は研究者、研究設備及び運営資金を提供している。新研究所設立後、企業側の需要に応じてプロジェクトで委託研究開発や共同研究開発を行う。プロジェクトの資金は、大部分は企業側が提供し、一部は国の競争的資金を受けている。

科学院傘下の研究所においては、その技術的な蓄積を地域や産業界へ橋渡しすることが科学院本部から奨励されており、各研究所は技術移転やスタートアップ支援などによって、「院地協力」を推進している。ただし、複雑な技術移転課題の場合などでは、科学院傘下の研究所だけでなく、多くの他機関も巻き込んで研究・事業を行うこともある。院地協力事業により設立された中国科学院深セン先進技術研究所(SIAT)の院長助理(事務方の副院長相当)からのヒアリングによれば、同研究所では基礎研究はせず、産業界への技術の橋渡しをすべく、マーケットを意識した応用・開発研究のみに集中しており、研究としては質の高いプロジェクトでも、事業化の見込みがなければ5~6 年で打ち切られることもあるとのことである。同研究所からは、MRI(磁気共鳴映像法)検査装置を製造することに成功したベンチャー企業がスピンアウトしており、2018 年6月時点で既に中国国内で200 台程販売されていた。当ベンチャー企業は、中国科学院深セン先進技術研究所内で開発を行い、上海で生産を行っている。オリジナリティの高い技術をどこから導

入するか、及び優秀な若い人材をいかに獲得し、定着させるかが当研究所の課題であるとのことである。前者に関しては日本などからオリジナリティの高い技術を導入することに努力し、後者に関しては、いかによい給与を与えるかにかかっているとのことである。当研究所のように、院地協力事業による活動は、研究所からのスピンアウトを研究者らに奨励するなど、産業化に向けた開発に力を入れているケースが多い。

② 中国科学院・STSN プログラム

中国科学院は前述の院地協力事業に基づき、複雑な課題に対応するため、より幅広い地域における多くの研究所・組織との異分野連携を通じ、地域の企業や地方行政に科学技術成果の橋渡しを推進するSTSN(Science and Technology Service Network)プログラム303を打ち出した。STSNプログラムでは、戦略的新興産業の形成、中堅企業の技術の高度化、農業技術の向上、自然資源、環境保全、及び都市化に伴う都市環境の管理等の分野で、地域政府や企業からの受託研究を行う。STSN プログラムの窓口部門が研究課題の依頼を受け、プログラムを管理する科学技術促進局(以下は、促進局)が科学院内で公募を行う。研究資金の分担については、促進局が科学院側の研究資金負担分の7 割を負担し、各研究所は3 割を負担する。最終的に、プロジェクトが当初の目標設定を達成できた場合、促進局は各研究所の負担分を奨励金として返還する。__③ タイマツ計画に基づくハイテク技術産業開発区の設置研究成果の商品化、産業化、国際展開を促すことを目的に、中国全土に国家レベルのハイテク技術産業開発区を建設するタイマツ計画が1988 年から科学技術部により実施されている。これは、1980 年に導入された経済特区制度、1984 年に開始した経済技術開発区を更に拡張したものととらえることができる。

開発区では、製品輸出企業、ハイテク企業への税優遇等が実施されており、北京の「中関村」が最初に認定を受けた。2016 年時点で、全国146 ヶ所に開発区が設置されている。

④ 国家自主イノベーションモデル区

国家自主イノベーションモデル区は、各地域が自ら提案し、国務院の認可を受けたものが指定を受ける制度である。国が推進する重大特定プロジェクト等の研究開発をイノベーションへとつなげることや、地域の特色に応じた多様なイノベーションシステムを構築することを目的としている。「科学技術第12 次五カ年計画(2011~2015 年)」では、国家自主イノベーションモデル区への支援を拡大する方針が掲げられている。

2009 年3 月に初の国家自主イノベーションモデル区に指定された北京中関村国家自主革新モデル区は、世界的に影響力のある科学技術革新センター及びハイテク産業基地を目指し、「核心的イノベーション要素の統合」の中で、「知的財産権制度モデルパークを建設し、国の知的財産権戦略の実施徹底を推し進める上のけん引役を果たす」ことを目指している。北京中関村に続いて、武漢東湖ハイテク開発区、上海張江国家自主創新モデル区、及び安徽省の合肥・蕪湖(ブコ)・蚌埠(ホウフ)国家自主イノベーションモデル区など、21 カ所(2019 年9 月現在)が指定されている305。① 重点大学、グローバルCOE

中国では1993 年より21 世紀に向けて100 の大学を重点的に育成することを目的に「重点大学」を指定している。また、1998 年にはこれら重点大学の一部をより重点化するための「21 世紀に向けた教育振興行動計画(211 プロジェクト)」が実施されることになった。当計画は、1998 年5 月に提言されたことから一般に「985 プロジェクト」と呼ばれている。更に、2015 年10 月に国務院が「世界一流大学・一流学科の建設を推進する全体方策」を発表した。目標として、「2020 年までに若干の大学や学科が世界一流の水準に達する、2030 年までにより多くの大学や学科が世界一流の水準に達する、2050 年までに世界一流の水準の大学や学科の数と質が世界の最先端となり、高等教育の強国となる」ことが掲げられている。② 大学イノベーション能力向上計画実施案(2011 計画)

2012年3 月に教育部と財政部が共同で「大学イノベーション能力向上計画実施案(2011 計画)」を発表した。「大学、中国科学院及びその他の国立研究機関間の壁を打ち破り、協力の強化によるイノベーション能力の向上」による「資源の共有と異分野融合を促進し、人材育成と研究レベルCRDS向上」を目指している。申請主体は、大学をリード機関とした複数の研究機関により編成された研究グループであり、「共同イノベーションセンター」への資格を申請する。認定されたセンターは、国立研究機関、企業、地域行政及び海外の機関等と適宜協力関係を構築することが推奨される。共同イノベーションセンターは、「科学技術の最先端」を目指す「最先端型(科学前沿)」、「国のソフトパワーの向上」を目指す人文・社会科学の「文化伝承型(文化传承创新)」、「新興産

業の促進及び旧重工業基地の再建」を目指す「産業型(行业产业)」及び地域活性化を目指す「地域振興型(区域发展)」の4 つカテゴリ(类型)に分類されている。共同イノベーションセンターは、「最先端型」の場合は年間5,000 万元(約10 億円)、「文化伝承型」「産業型」及び「地域型」の場合は年間3,000 万元(約6 億円)が国から4 年間助成される。2012 年以降、年に1 度の頻度でセンターの選定が行われている。2013 年の第一期で「最先端型」における14 のセンター、2014 年の第二期で「最先端型」における24 のセンター、2014 年の第三期で「文化伝承型」における5 のセンターが認定されている。

米国

米国は、目的に応じた多様な研究資金が併存する典型的なマルチファンディング・システムの国であり、各省庁とその傘下の国立研究所や連邦出資研究開発センター(FFRDC)38が、それぞれの分野ごとに基礎・応用・開発研究を支援・推進している。基礎研究における主要な研究資金配分機関としては、医学分野のNIH、科学・工学分野のNSF、エネルギー分野のDOE 科学局(DOE/SC)39等が挙げられる。NSF は資金配分に特化した機関として、研究費のほぼ全て(98%)を大学など外部組織の研究者へ配分している。一方NSF 以外の各組織は、内部研究機能と外部への資金配分機能の双方を合わせ持っている。例えばNIH は、研究費の8 割を外部向け(extramural)研究資金として大学等に配分する一方で、2 割を内部向け(intramural)研究資金として傘下の27 研究所・センターにおける研究開発に振り向けている。DOD も同様で、6 割を外部に資金提供し、4 割を内部

研究に充てている。対照的にDOE は、研究資金の6 割を17 ある内部研究所で使用しつつ、DOE/SC 等を通じて残りを外部向けに資金配分している。中心的なファンディング機関であるNSF は、最新の戦略計画40『未来のための、発見とイノベーションへの投資:NSF 戦略計画 2018-2022 』(2018)41の中で、①科学、工学、学習におけ

る知識の拡大②現在および将来の課題に対処するための国力の強化③NSF のミッションの遂行と業績の向上、という3 つの戦略目標を掲げ、それらを実現するための短中長期の目標と達成手段を明らかにしている。また、2019 年度事業の目玉として「NSF が未来に向けて投資すべき10のビッグアイデア」の予算化を打ち出している。この10 のビッグアイデアは、「NSF におけるコンバージェンス研究の拡大」、「NSF INCLUDES(理数教育を通じたダイバーシティの拡大)」、「中規模研究インフラ」、「NSF 2026(斬新なアイデアの長期支援)」を主題とする4 つの「実現アイデア」と、「データ革命」、「人間と技術のフロンティア」、「生命法則理解」、「量子飛躍」、「宇宙の窓」、「北極」を主題とする6 つの「研究アイデア」で構成されている。

米国のファンディング・システムの特徴の一つとして、ハイリスク・ハイペイオフ研究支援を専門とする機関の存在が挙げられる。インターネットやステルス技術を生み出したDOD の国防高等研究計画局(DARPA)42が代表的であり、DARPA の成功に倣ってDOE にはエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)43が設けられている。また、インテリジェンスの分野では国家情報長官室(ODNI)の所管するインテリジェンス高等研究計画活動(IARPA)44がある。なお、連邦政府資金を用いた研究開発から生まれた成果については、原則として広く公開・活用を図る方針がとられており、2013 年2 月にOSTP が発出した指令に基づき、各省庁において連邦政府資金による研究成果(論文、データ等)のパブリックアクセスを拡大するための計画が策定されている。一方、2018 年に展開された米国と中国のハイテク分野の摩擦は、米国の研究開発のファンディング・システムにも直接的な影響を与えている。特定の国による組織的な行為が米国における研究の安全や公正(integrity)に対する侵害のリスクを与える可能性が意識され、ファンディング機関における全面的な調査や対応が展開された。2018 年4 月、NIH が傘下の研究所やその研究ファンディングを受領する全米の大学や研究機関に対し、徹底的な調査を開始することを要請し、同年8 月にはさらに外国政府・企業との資金的関係を開示する措置を徹底させるよう求めた。また、NSF は、2019 年3 月に科学助言グループ「JASON」に委託し、NSF、NIH、DOE などの主要な公的ファンディング機関及びその他の情報機関、法執行機関によって提供された証拠に基づき調査を行い、12 月11 日付で報告書「基礎研究の安全保障」を発表した 。同報告書は、米国の基礎研究における開放性と、外国人材が集まり協働する開かれた研究環境を維持することが米国の科学技術力の優位を保証すると確認した一方、特定の国による影響が研究の安全や公正性を侵害する問題に対しては、研究における責務相反および利益相反などの開示に向けた透明性の向上と条件の明確化などの措置を早急にとるべきと提言した。_

ライフサイエンス・臨床医学分野

「All of Us」研究プログラム(個別化医療のためのコホート研究)

② BRAIN(Brain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies)イニシアティブ

③ がん・ムーンショット(Cancer Moonshot)

④ 再生医療イノベーション・プロジェクト

医学系以外のライフサイエンス分野に関しては、多くの省庁において研究開発活動が行われている。省庁横断的な取り組みとしては、2000 年のバイオマス研究開発法に基づくバイオマス研究開発イニシアティブが、DOE とUSDA を中心とする8 省庁・機関により推進されている。トランプ政権は2021 年度の研究開発予算優先事項の一つとしてバイオエコノミーを特定した上で、2019 年10 月に「米国バイオエコノミー」サミットを開催し、バイオエコノミー関連の研究開発予算を優先化して基礎研究を推進するとした

 

システム・情報科学技術分野

人工知能(AI)」サミット、同9 月には「量子情報科学における米国リーダーシップ

強化」サミット、同9 月には「5G 通信」サミットが開催され、有識者による政策議論が交わされた2021 年度

のPCA もこれら11 領域となる予定である。

① 人工知能(AI)

② 人のインタラクション、コミュニケーション、能力向上のためのコンピューティング

(CHuman)

③ フィジカルシステムをネットワーク化するコンピューティング(CNPS)

④ サイバーセキュリティとプライバシー(CSP)

⑤ 教育と人材(EdW)

⑥ ハイケイパビリティーコンピューティング・システムの研究開発(EHCS)

⑦ ハイケイパビリティーコンピューティング・インフラと応用(HCIA)

⑧ インテリジェント・ロボット工学と自律システム(IRAS)

⑨ 大規模データ管理と解析(LSDMA)

⑩ 大規模ネットワーク(LSN)

⑪ ソフトウェアの生産性・持続性・品質(SPSQ)

2020 年度のNITRD 予算に対する大統領府の意向として、全体で55 億ドル、うちAI 関連で9.7 億ドルが予算教書ベースで示されている。なお、いずれの金額も、DOD およびDARPA のAI 関連予算は非公開のため含んでいない。

ナノテクノロジー・材料分野

NNI では、①世界クラスのナノテクノロジー研究開発の推進、②商業的および公共的利益のための新技術の製品への移転促進、③ナノテクノロジー発展のための教育投資、熟練労働力の確保、インフラ・機器の整備、④ナノテクノロジーの責任ある発展の支援、の4 つを戦略目標として、20 の省庁が協同して研究開発を行っている

① ナノテクノロジー・シグネチャー・イニシアティブ(NSI)およびグランド・チャレンジ(GC)・持続可能なナノ製造 [NSI]・2020 年およびその先のナノエレクトロニクス [NSI]・センサーのためのナノテクノロジー、ナノテクノロジーのためのセンサー [NSI]・ナノテクノロジーを通じた水の持続可能性 [NSI]・ナノテクノロジーにより促進される未来のコンピューティングのグランド・チャレンジ[GC]

② 基盤的研究

③ ナノテクノロジーにより発展するアプリケーション、デバイス、システム

④ 研究インフラおよび計装

⑤ 環境、健康、安全

先進製造分野の研究開発本プログラムはNIST に置かれた先進製造国家プロ

グラム局(AMNPO)を事務局としてDOD、DOE、NIST、NSF 等の参画機関により運営されており、産学セクターのための先進製造研究基盤として製造イノベーション研究所(MII)を構築することを目的としている。これまでに14 拠点のMII が整備されており、うち8 拠点がDOD、5 拠点がDOE、1 拠点がDOC によって設置されたもので、積層造形、デジタル製造、バイオ、エネルギーなど様々な技術分野の研究開発が進められている、3 つの目標として①新たな製造技術の開発、②製造業の人材の教育、訓練、ネットワークの構築、③国内の製造サプライチェーンの拡大、を掲げている74トランプ政権下では国際情勢も踏まえた希少鉱物(critical minerals)の確保に関する戦略的取り組みが進んでいる。商務省(DOC)が政府機関全体の行動計画を含む希少鉱物の供給確保戦略を発表し、リサイクルや代替技術の開発、サプライチェーン強化など希少鉱物の対外依存度低減に向けた方策を打ち出している77。

 

欧州連合(EU)

EU の行政機関である欧州委員会の中で省庁と同格の役割を果たす総局のうち、研究・

イノベーション総局(DG-RTD)が科学技術イノベーションを所管している。また企業・産業総局、環境総局、コミュニケーションネットワーク・コンテンツ・技術総局、エネルギー総局など他の総局もそれぞれの担当分野における科学技術イノベーションに関連した政策の形成を行っている。これらの各総局が作成した案をDG-RTD が調整し、政策案としてまとめている。次に、欧州委員会に対する科学的助言の仕組みとして、SAM(Scientific Advice Mechanism)という仕組みが存在する。SAM は、以下のような科学的助言を行うことを目的とする。SAM の中心は、ハイレベルグループと呼ばれる専門家集団である。7 名の広範な分野(分子生物学・細胞生物学、社会学、物質科学、原子力、気象学、数学、微生物学)にわたる学識者から成る。その役割は、①欧州の政策決定において、独立的な立場からの科学的な助言が不可欠な問題に対し、エビデンスや経験則(その確からしさや限界に関する情報も含む)とともに科学的な助言を与えること、②ある特定の政策的な課題を同定するための助言を与えること、③欧州連合の政策決定に関する欧州委員会と独立した科学的助言とのやり取りのあり方について改善の提案を行うこと、である。また、ハイレベルグループを支える事務局機能を、欧州委員会の研究・イ

ノベーション総局内に持たせている。さらに、欧州委員会はその内部に共同研究センター(JRC)というシンクタンクを有し、そこから得られた情報を活用している。JRC は欧州委員会の総局の一つと位置づけられ、それぞれの専門分野において欧州委員会の政策形成に役立つような科学的研究を行い、その結果に基づいて助言を行っている。例えば食品の安全性基準や、効率的なエネルギー利用等に関する研究などである。加えて、学界や産業界、各国政府の声を幅広く採り入れるための多様な方法が用意されている。

加盟国政府や各国の学協会などは随時欧州委員会の意見募集に対して意見を表明でき、またERA-NET と呼ばれる研究コンソーシアムもあり、ここで議論された内容が参考にされることもある。

以上の内容を示したのが、である。まず、欧州委員会において政策案(法案)が策

定される。政策案の策定には、欧州委員会直下のシンクタンクやその他の助言機関からの助言、様々なチャネルを通じての意見が反映される。策定された政策案は欧州議会とEU 理事会に諮られる。そこで承認が得られた政策プログラムは、研究支援実施機関などを通じて実行される。グラフェンプロジェクトでは、スウェーデンのチャルマース工科大学を中心に、欧州17 カ国にわたり61 のアカデミア機関と14 の企業によるコンソ

ーシアムを形成している。ヒューマン・ブレインプロジェクトでは、スイス連邦工科大学を中心に、欧州を中心に、域内外から80 のパートナーから成るコンソーシアムを形成している。日本からは沖縄科学技術大学院大学と理研が参加している。

また2016 年4 月には、FET Flagships の3 つめのプロジェクトとして量子技術が発表された。上級運営委員会が取りまとめたプロジェクトのガバナンスや実施体制に係る2017 年10 月の最終報告書をもとに、2018 年から実際にプロジェクトが推進されている。

さらに、2018 年末には「エネルギー・環境・気候変動」、「ICT・つながる社会」、「健康・ライ

フサイエンス」の分野で各2 つ、計6 プロジェクトがパイロットプロジェクトとして選定された。これらのプロジェクトは2019 年3 月から1 年間にわたり100 万ユーロの支援を受け、可能性検証を実施する。2021 年から最大3 プロジェクトが本採用となり本格支援を受けることになる。FET Flagships プログラムの特徴の一つは、支援対象者の選考プロセスにある。2013 年のプロジェクト選定に際しては、採択の条件として、選考期間の18 か月の間に、応募者が国をまたいだ研究ネットワークを構築し、各国の資金配分機関や企業からの資金援助を取り付け、プロジェクト推進に必要な金額の半分を負担できる体制をつくるという条件が課されていた。つまり、プログラム設計の中に、欧州に萌芽しようとするネットワークを、さらに育て上げる仕組みが組み込まれている。この時の選考で最終的に選ばれたのは2 プロジェクトであった。しかし、この過程で持続可能なプロジェクトが他にも4 つできており、2 プロジェクト分の資金援助を約束することにより、結果的に6 つの知識生産ネットワークを生み出すことに成功している。基盤整備については、EU では欧州全体の研究インフラの整備のため、欧州研究インフラ戦略

フォーラム(European Strategy Forum on Research Infrastructure: ESFRI)と呼ばれるEU加盟国が形成するフォーラムが2002 年に設立された。ESFRI は2006 年に専門家により策定された「ESFRI Roadmap 2006」を発表した。これは、10 年~20 年後を見据えた際に欧州共通で必要となる研究開発施設のロードマップである。その後、このロードマップは2008 年、2010 年、2016 年、2018 年にアップデートされており、現在はエネルギー、環境、健康・食糧、物理化学・工学、社会・文化イノベーション、デジタルの6 分野で55 プロジェクトが挙げられている。施設の例としては、地球環境研究のための観測施設、ゲノム解析のための巨大データベース、最新鋭の超高速スーパーコンピュータなどがある。このうちEU が機関として深く関わり、規模

が大きく、また現在、研究施設・インフラが稼働もしくは建設が行われている段階のプロジェクト(計画段階からすでに進んでいるプロジェクト)について以下に記載する。__欧州核破砕中性子源(European Spallation Source: ESS)91世界最強の中性子源を有する次世代の中性子発生研究施設として、欧州核破砕中性子源は建設を開始している。2009 年にスウェーデンのルンド市が研究センター建設サイトとして選ばれ、欧州において世界をリードする材料研究のセンターとなることを目指している。欧州核破砕中性子源では2013 年から建設を開始、2015 年10 月には同施設を運営するためのERIC(European Research Infrastructure Consortium)法人を設立した。2023 年からの利用者プログラムの開始を予定しており、出資金及び運用費は参加17 カ国が負担し、建設費及び運用費の一部をスウェーデン及び共同出資国のデンマークが保証する。建設費、設備費の合計で15億ユーロ程度が必要とされている。同じルンド市にあるルンド大学は放射光施設の建設を計画しており、今後材料科学や生物学の分野で研究の拠点となることが期待されている。またスペイン・ビルバオにもESS の部品製造などを行う施設が建設される計画である。② 欧州極大望遠鏡(The European Extremely Large Telescope: E-ELT)92

欧州極大望遠鏡は、ヨーロッパ南天天文台(European Southern Observatory: ESO)において2005 年ごろから実現に向けて計画が進んでいる、口径約40 メートルの次世代大型光赤外望遠鏡のこと。2024 年の運用開始を目指している。年間7.5 億ユーロ程度の運用費用がかかると見込まれている。運用の主体は欧州の14 カ国及びブラジルが共同で運営する団体であるヨーロッパ南天天文台だが、日本などの国も参加する可能性がある。

環境・エネルギー分野「統合的な欧州戦略的エネルギー技術計画(Integrated SET-PLAN)96」、「産業リーダーシップ」においては、先進製造というキーテクノロジー区分において、エネルギー低減型の製造技術、エネルギー効率の高い建物、二酸化炭素の排出を抑える製造技術についての研究が優先事項に挙げられている。また、宇宙というキーテクノロジー区分においては、環境負荷低減型のロケット発射装置の研究が進められている。次に「社会的課題への対応」においては、①安全かつクリーンで、効率的なエネルギー、②スマート、環境配慮型かつ統合された輸送、③気候変動への対処、資源効率および原材料、という社会的課題において、環境・エネルギー分野の研究が進められようとしている。①においては、ゼロ・エミッションに近い建物、低価格かつ低環境影響の電力供給、分散された再生可能エネルギー源をつなぐ欧州レベルでの送電網といったテーマが挙げられている。②においては都市部での輸送・交通手段を改善する研究等、③においては気候変動に関する理解を高めつつよりよい対応策を提示する研究等が推進されている。

原子力分野については、当該分野のフレームワークプログラムであるEuratom が運営されている。Euroatom にはHorizon 2020 の下、2014 年~2020 年で16 億ユーロが配分されることになっている。

ライフサイエンス・臨床医学分野現在のライフサイエンス分野の研究政策の柱は、個別化医療、環境と健康、公衆衛生等である。、個別化医療に向けてオ

ミクスデータを活用する方針が示された。環境と健康については、「環境・エネルギー」の項で述べた第7 次環境行動プログラムの3 番目の目標(人々の健康や福祉に対する環境からの脅威を軽減する)が基本方針となっている。公衆衛生については、医療システム改革に向けたエビデンスの活用、欧州の多様な医療システムの活用とデータの相互利用の促進、医療技術アセスメント等に資する研究を推進する方針が示されている。、「産業リ

ーダーシップ」においては、バイオテクノロジーがキーテクノロジーの一つに挙げられている。この区分では、生物学的・生物医学的診断装置の開発といったテーマの研究が進められようとしている。また、「社会的課題への対応」では、保健、人口構造の変化および福祉という区分においてこの分野の取り組みが示されている。それによると、①疾病研究(慢性病、感染症など)、②特定課題(医療システムの効率化、新たな医薬やワクチンの開発、医療の公平化)、③方法論、ツール、技術の開発(希少疾患の治療法、オーダーメイド医療、遠隔医療など)の優先事項が掲げられている。、先述の医薬分野の共同技術イニシアティブ (JTI)であるIMI2 への投資を通じ、革新的な医薬の開発も支援している。

システム・情報科学技術分野、未来技術(Future and Emerging Technologies: FETs)において、ICT をインフラとする先端技術の研究が進められている。特に大規模なものとして、グラフェン、ヒューマン・ブレイン、量子技術の各プロジェクトがある(3.3.1.4 で詳述)。「産業リーダーシップ」においては、ICT は6 つのキーテクノロジーのうちの1 つに指定されており、その中でも群を抜いて大きな投資(76 億ユーロ)が予定されている(2 位はナノテクノロジーと宇宙で、それぞれ約15 億ユーロ)。「社会的課題への対応」においても、ICT はインフラ的役割を担う。特に医療、クリーンなエネルギー、環境負荷の小さい輸送といった課題でICT 関連の研究が進められる。さらに、欧州イノベーション・技術機構(EIT)では、デジタル分野の研究・教育が進められる。ここでの主要テーマは、スマートスペース、スマートエネルギーシステム、健康・医療、未来のデジタルシティ、未来のメディア・コンテンツ配信、インテリジェント輸送システムである。

ナノテクノロジー・材料分野、ナノテクノロジーの開発、発展のため、研究開発投資の拡大、インフラの整備、産業の革新、人材開発などに加えて、健康・安全・環境・消費者保護および国際協力の推進の2 つの取り組みについての重点的対応を提唱している「産業リーダーシップ」において、ナノテクノロジーと先進材料が6 つのキーテクノロジーのうちの2 つに指定されている。前者では、ナノ材料・ナノデバイス・ナノシステムに関する研究や、ナノテクノロジーに関する安全面・社会的側面の研究、ナノ材料や部品の製造プロセスの改善に関する研究などが進められている。後者では、自動修復などの機能材料、大規模かつ持続可能な材料製造技術、計測・標準化・クオリティコントロール技術などが優先事項に挙がっている。「産業リーダーシップ」におけるナノテクノロジーと材料分野への投資は、それぞれ約15 億ユーロと約14 億ユーロである。これらを加えるとICT 分野の76 億ユーロに次ぐ第2 位になり、技術開発におけるプライオリティの高い分野であることがうかがえる。また、10 年間で10 億ユーロという巨額のプロジェクトFET(Future and Emerging Technologies)がEU におけるトップクラス研究拠点形成を支援するという目的で進められており、2013 年開始のGraphene

Flagship、Human Brain Project と、2018 年開始のQuantum Flagship はナノテクノロジー・材料分野とも密接に関係している。

 

英国

UKRI、研究会議およびInnovate UK によるプログラムの例である。

① 未来のリーダー・フェローシップ(Future Leaders Fellowship)114

2018 年にUKRI が立ち上げた若手研究者向けの大型フェローシップである。11 年間で9 億ポンドという大規模な予算が充てられている。2018 年から2021 年の間に6 回の公募を行い、少なくとも550 人のフェローを支援することを予定している。キャリア初期の研究者やイノベータに対して最長7 年間のファンディングを提供し、それにより研究者が野心的・挑戦的な研究領域に挑戦しやすくなる。採択されたフェローには最初の4 年間で120 万ポンドが提供され、評価次第で続く3 年間も支援が受けられる。

本制度の目的は、次世代の技術起業家、ビジネスリーダー、イノベータがキャリア形成に必要なサポートを受けられよう支援することである。この制度は世界中の最高レベルの研究者に開放されており、出身国がどこであろうと、最も優れた人材を英国が引き続き獲得できるようにするものである。

② CASE studentships(Collaborative Awards in Science and Engineering)

CASE は、研究会議による博士課程学生のトレーニングのための奨学金プログラムである。学生は大学と企業双方で研究指導を受け、博士号を取得する。学生は大学に籍を置くが、最低3 か月間は企業での研究に従事しなければならない。支援負担の大部分は研究会議によるが、企業も追加的な資金提供を行う。名称や募集人数、予算等は研究会議ごとに異なるが、通常、対象期間は3 年~4 年、募集人数は各研究会議で年間30 名~90 名程度である。奨学金額は年間最低約1 万4,000 ポンドとされている。加えて企業による追加助成がある。小規模企業を除く参画企業は、研究プロジェクトの費用も一部負担する必要がある。

③ 知識移転パートナーシップ(Knowledge Transfer Partnerships: KTP)115

KTP は主に、ポスドクあるいは大学卒業者が通常1 年~3 年(最短10 週間)、企業において革新的なプロジェクトに参画するのを支援するプログラムである。Innovate UK が管理・運営を行っている。同プログラムは、企業と学術機関との連携を構築し、学術機関が有する知識やスキル、技術を用いて、英国の産業界の競争力や生産性を高めることを目的としている。企業にとっては、アカデミアのスキルや専門知識を獲得することができ、学術機関にとっては産業界との協力関係を築くことができるというメリットがある。

人件費、研究装置・材料費、間接経費等がプログラムの支援対象となる。中小企業の場合は総費用の3 分の1、大企業の場合は半分を自己負担し、残りを政府が負担する。

2013 年度のKTP 報告書116によると、実績として、同年度はプロジェクト全体で2.11 億ポンドの収益増加があり、450 以上雇用が新規に創出された。また、年間輸出額は2.07 億ポンドの増加となり、設備投資および研究開発投資は合わせて9,500 万ポンドにのぼった。これは、政府投資100 万ポンドにつき、25 の雇用が新規に創出され、353 人がトレーニングを受け、また、220万ポンドが設備投資に、306 万ポンドが研究開発に投資されたことになる。OECD が発表する、2006 年から2016 年の間に国境をまたいだ研究人材の移動(論文著者の所属先の移動を基にした集計)によれば 、英国の研究者の海外移動に関しては英国・米国間の移動が最も多く、英国から米国への移動が39,645 人、米国から英国への移動が38,238 人、合計77,883人であった。その次に英国との移動が多い国はドイツ(合計18,829 人)、オーストラリア(合計18,778 人)、カナダ(合計13,455 人)、フランス (合計12,794 人)の順となっている。英語圏の国々と欧州主要国間での移動が多いことが見て取れる。英国における主要なトップクラス研究拠点